テネシー作品の魅力

 テネシー•ウィリアムズは1911年にアメリカ合衆国ミシシッピ州に生まれました。戯曲、小説、詩など生涯70以上の作品を書いたそうですが、代表作は「ガラスの動物園」「欲望という名の電車」「やけたトタン屋根の上の猫」などの戯曲です。舞台でヒットした作品は映画化でさらに大成功を納めたので、今や古典の域に入りながらも作品が生まれた当時の臨場感をそのまま鑑賞することができます。

 作品の背景には経済不況のアメリカと、古き良き時代を奪われた南部地域の悲哀が根強く描かれ、どこか今の日本やアメリカのもつ閉塞感にも通じるものがあります。

 私にとってのテネシー作品の魅力は、<家族>と<故郷>への思い入れの深さと、人間観察の繊細さです。「田舎」を持つ人間に内在する強さと哀愁に共感するのです。 同じくアメリカ南部の作品である「風と共に去りぬ」、日本では寅さん映画等もその意味で大好きですが、それらの「故郷」が現実より少し美化されているのと比べて、テネシーの視線はクールです。まっすぐ、心の痛いところを突いてくる。老い行く中年女性と、立ちすくむ青年の描写においては、もはや神業です。世の中で最小単位の共同体である「家庭」に、たくさんの矛盾を含んだ小宇宙を見ることができます。

 もうひとつ魅力として挙げておきたいのは、<南部訛り>です。語尾の重たい、湿ったイントネーションで延々と繰り広げられるおしゃべりがテネシーワールドの重要な「だし」です。ところが日本語の上演では、だし抜きの状態になって何か物足りない。この課題には取り組みがいがありそうです。私自身は、シェイクスピア作品を翻案して東北弁で上演するグループで長い間活動してきたので、地元の東北のことばはもちろんのこと、地方色の濃い世界が好きです。いろいろな言葉の持ち主と巡り会いたいと思います。
 
 中年の女、アメリカ南部、その訛り、それらはどれも<過去の栄光>と<衰退に向かうもの>の象徴、とも言えましょうか。テネシーはその狭間に立ち、深い愛情をもって人間と社会を描き出しました。

 人生折り返しの年ごろに差し掛かった南部の女として(この場合は「南部藩」ですが)、微力ながら彼の作品への共感を表現していけたら光栄です。
by tnexpress | 2011-09-10 16:05 | テネシーの魅力


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