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ブエノスアイレスか・・・

ここに来たら、一筆書きたかった。ブエノスアイレス!

昨年作った THE LONG GOOD-BYE で、主人公の青年が家族の記憶が染みついた家を出る準備をしながら、どこか遠くに行けたらなあ、という意味で 「ブエノスアイレスか・・・」 と空を仰ぐセリフがあったのだ。余白のあるセリフで、以来その町がどんなところなのか気になっていたものの、1年以内に実際に来れるとは幸運だった。

初めての滞在だというと皆、「町の印象はどう?カオスでしょ?」という。
そして地元の人たちの誇りは 「ノスタルジック」 であること、これが最上位だ。
ブラジルはサンバでしょ、僕たちはタンゴだから、ね、全然違う、と言われるとわかりやすい。

THE LONG GOOD-BYE と ノスタルジー、ぴったりとパズルがはまるではないか。
「ブエノスアイレスか・・・」を私は当初、「カオス」の方で解釈していた。父の出奔、母の病気、妹とのけんか、主人公を追いかけてくる悲しい記憶を断ち切るために、知らない町で喧噪に身を沈めたい、という意味で読んでいた。
それもあったろうけれども、ここでサンパウロとか、メキシコシティーではなくて、「ブエノスアイレス」を呟かせたテネシーのイメージは、もっとシンプルだったのかもしれない。
こんなふうに、長い期間の疑問がふと、体験的に腑に落ちる瞬間はとても好きだ。

もうひとつ、町の名前は 「ブエノス=Good」、「アイレス=Air」 という意味だそうだ。
「いい空気」の中で誕生日を迎えられた今年は幸先がよい、かもしれない。
by tnexpress | 2012-09-29 23:52 | 道草

無名時代の作品

 前回書いたのが7月15日、ということはもう2ヶ月も過ぎている•••速いですね。
しばらく翻訳作業をしていました。暑さにめっぽう弱い私は、旅行から戻ってからこの夏は遊びに出る気になれず、休日はエアコンの効いた家の中が楽ちん。そのお陰で作業もはかどりました。

 今取り組んでいる作品はSPRING STORM という、テネシーがまだ詩人のトムだった若い時代に初めて書いたという長編戯曲です。当時は周囲から酷評を受け、上演されないまま忘れられて90年代になってから原稿が発掘されたそうです。私は2010年にロンドンのナショナルシアターでの上演を見てその存在を知りましたが、その時は「過去にアメリカで1回上演実績があるだけで、イギリスには初上陸」という宣伝文句でした。日本では翻訳も出版されておらず、ほとんど紹介されていないと思います。

  上演を見て、その後本を読んでみて、私はこの作品がとても好きになりました。確かに若さゆえの浅さ(というか丁寧すぎるところ)が所々にあって、世界中にたーくさんある脚本の中からこれを選ぶかと言われると難しいですが、テネシーファンとしては、彼の出発点を丁寧に探検できるというスリルがあります。そして、初心者ゆえの丁寧さが、逆に脚本やお芝居に慣れていない人にとって入りやすい内容を生み出している面もあります。それで、この作品の存在と面白さを紹介していく企画を計画しています。
 このブログでも、時々書いて行きましょう。
by tnexpress | 2012-09-17 11:30 | 翻訳作業