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Cassavetes' Love Streams

昨年の芝居作りにずっと伴走してくれたムライさんに、私の何かがカサヴェテスと似ているからぜひ見てごらんと言われてから気になって、まずはレンタル屋に唯一あった「グロリア」を見た。そして、実はカサヴェテスの信奉者である夫が中でも一番好きだという「ハズバンズ」のDVDを家に持っていたのでそれも見た。他の作品をどうやって見たらいいのかな、、、と思っていたら今月渋谷のイメージフォーラムでカサヴェテス映画の特集がかかっている。

先週「オープニング・ナイト」を見てぞわっとした。老いにもがく大女優役のジーナ・ローランズが「17歳の私は何でもできた。今の私は頭と体がバラバラだ」と言う。心身ともボロボロになりながらも舞台に帰るしかない寂しさとおかしさ。17歳の感性をずっとキープできる人にだけアーティストの資格があるんじゃないか、と長いこと思ってきたけれど、そんなに単純なものいいをするのはやめよう。

昨日は「ラブストリームス」を見に行った。姉弟とその家族の愛情が迷走する物語。切実な場面の連続の前で内臓はポカポカしてくる。これが愛の温度なのかしら。帰りの電車の中でもずっと涙がこぼれそうなのを我慢した。そして、埼玉の叔母さんが病気で亡くなる前に、父(叔母にとっては末の弟)と2人でしみじみと話をすることを希望して彼を家に呼んでいたことが妙に思い出された。
この作品はカサヴェテスの遺作となり、製作時は余命6ヶ月と宣告されていたそうだ。邦題が「ラブ・ストリームス」という表記なのはちょっと残念。本来は"love streams and it never stops" という流れるようなイメージなのだ。愛は溢れ出し、流れ続けて、止まるところを知らず。彼の生涯をかけた叫びが凝縮されている、大事なタイトルだと思う。
# by tnexpress | 2012-06-15 00:56 | 観劇ノート

パリの記録

やっと終わりました。
この2ヶ月、相当なプレッシャーだったバルセロナでのイベント仕事が先週で完了!
今週はパリに移動して少しオフの時間もあったので、2本観劇してきました。

"Le Fils" (息子)  by Jon Fosse
*ノルウェーの現代作家のヨン・フォッセの作品は世界中で人気があり、たくさんの翻訳上演もされているそうです。抽象的で一見難解ですが、 家族と生と死についてのテーマというのは文化を超える普遍性があるのでしょう。

"Mademoiselle Jullie" (令嬢ジュリー) by August Strindberg
*知人のメールでジュリエット・ビノシュの「令嬢ジュリー」がパリで公演中であることを知り、慌てて行ってみました。こちらも原作は北欧、スウェーデンですね。

演劇という娯楽の前提として、「言葉がわかる」ことがあるよな、と再認識した今回でした。というのも私はフランス語ができないので、劇場のサイトから前売りを買おうとした時にはフランス人の助けが必要だったし、当日券で入ろうとしたオデオン座(令嬢ジュリーの方)では、売り子に「全部フランス語で2時間よ」と怪訝な顔で念押しされました。パンフもアナウンスも全部フランス語。芝居を見に行ったと言うと、現地の同僚からは「勇気あるねえー」と驚かれました。まあ確かに、逆の立場を想像すれば、日本の芝居を普通の外国人に勧めることはないかもしれない。そういう意味では、歌舞伎座のイヤホンガイドは本当に便利です。

それよりおかしかったのは、やはりオデオン座で、「4階席しか空いていなくて、舞台から遠くて全然見えないよ」という売り渋り。いやいや、それは今日しかダメな私にとっては席があるという意味なのだよ。ここまで買いにきている客に、どうしてそんなにいくつもハードルを設けるのだろう?・・・結局入ってみればそれほど大きい劇場ではなく、舞台は全然近いし、角度が急なため奥の演技は確かに足しか見えないけれども、14ユーロにしては満足の環境でした。

そんなこんなで、ともかく一仕事落ち着いて、ようやくコツコツ生活に戻れそうです。
# by tnexpress | 2012-06-03 18:28 | 観劇ノート

エレベーター

このところ完全に仕事に「ハマって」いる。
疲れたので木曜は1日自宅での仕事に切り替えたが、いずれにしろ遠くにいる同僚たちとメールや電話で仕事をするので、トラブルは容赦なくやってる。夕方からパリと上海でバトルが始まり、夜に入って今度はアメリカとブラジル相手に手のかかる調整ごとが押し寄せて、夜中の2時でその日は止めた。床についても胃と背骨あたりの興奮がおさまらず、なかなか寝付けない。

翌朝も、前夜からの継続モードで出勤した。するとオフィスへ上がるエレベータに、最近私と同郷とわかったSさんも乗ってきた。

「明日から2日、盛岡に行くんですよ。兄の結婚式があって。」

という。会場を聞くと、駅の近くにあるホテルだ。

「いい場所だね。目の前に北上川が流れてて、そこから岩手山も見える。。。」

川の向こうは材木町だ。橋を渡ったいろいろな季節の色がよみがえってくる。情景、といのはきっとこういうことをいうのだろう。風景と記憶の重なり。

「盛岡の話をしたら、帰りたくなっちゃっった」

朝の会社のエレベータには不似合いな言葉が口をついた瞬間、涙がにじむ。
自分の階に来たので、じゃ、と言って急いで降りた。
大仕事と格闘している時、故郷の記憶は一層のどかになりる。しばらくは無理だけど、一段落ついたら帰ろうと思う場所。

席に着くと、社内報が配られていた。震災特集、表紙には被災地の子供がにっこり笑った写真の横に、「将来は日本中の人の勉強に役立つ教材を作りたい」という見出しが入っている。

嗚呼。

故郷の風景が消失してしまった人たちは、
生きている間はもう帰れないと宣告された人たちは、
今どんな気持ちでいるのだろう。
# by tnexpress | 2012-03-17 11:11 | 道草

瀬戸内海の島へ

先週休暇を取って、瀬戸内海の島へ旅をしました。

あの辺りでは最近20年の間に現代アートのプロジェクトが新興し、
大自然の中に新種の遺跡を発見するような楽しみ方で諸島を巡ることができます。
直島では安藤忠雄さんの建築やアート作品を満喫し、そこから犬島、豊島へ渡りました。
普通の美術館では、作品はいろいろなところから収集されて展示されます。
しかし今の瀬戸内では、アーティストが島に滞在してその場所で想起した作品を作っています。
だから作品がその場に存在する意味は直感的に伝わってくるし、ちょっと意外なものとのコントラストによって自然の美しさが際立って見えます。非日常を放り込んで日常の価値を悟る、これがアートの役割なんだな、というところまで本当に素直に腑に落ちる場所です。
直島アートサイト

もうひとつ面白いのは、町中に点在するアート作品のガイドさんが、地元のおじいちゃん、おばあちゃんだということです。彼らはアーティストから直接聞いた話をすっかり自分のものにして、お客さんに伝えてくれます。ちぐはぐさを超えて、作品がレベルアップしていく印象を受けます。彼らの全身からあふれる労働と暮らしのリアリティ、その後ろにある大自然、対話のきっかけを生み出すアート。
これからどんなことをやって行きたいのか、考えを深める要素をたくさん得られたように思います。
うまく言葉になりませんが、とても刺激的な旅でした。
# by tnexpress | 2012-03-09 00:28 | 道草

写真のワークショップ

最近ブログの更新も連絡もなく、あいつは何をしているのだろう?と、思ってくれている人も、気にしていない人もいるでしょうが、このところ、やってみたい作品の案を2つ同時に考えていて、キックできるまでもう少し時間をください。

どうも私の関心は、演劇というより急速にドキュメンタリーに動いているようです。フィクションを本物らしく見せる努力の代わりに、フィクションを介してあぶり出される私たちの現実の方にフォーカスしたいのです。もしかしたらこのアプローチは写真や音楽の作られ方の方が近い気がして、今日はとある写真のワークショップを見学させていただきました。

先生を囲んでお弟子さんが10名ほど集まり、ひとり分ずつ作品を並べては、互いに質問や批評を出し合って行きます。「なぜその対象を選ぶのか」、「何を見せたい(伝えたい)のか」、「どうやって撮ったのか」、大きくはこの3点で、特に最初の2つが肝心のようです。
そして、彼らも結構フィクションをやっているのだ!というのが大きな発見でした。文字からして「真を写す」という先入観を持っていたのですが、それは少し違いました。撮影する時と、人に見せるために再構成する時、そこに作者の意志がしっかり込められているべきだいうことを、先生は何度も指導されていました。その作業を一人で全部やらなければならない厳しさも感じました。

分業が明確な演劇の方が、割と逃げ道があるかもしれません。脚本に書いてない、演出の方向性が不明確、役者が下手だ、等々、文句を言いやすい構造なのです。今日のようなワークショップ、私もやってみようかと思います。各自が自分の読みたい作品やシーンを持ってきて、実演してみせて、参加者からフィードバックしてもらう。「なぜそれを選んだか」「何を見せたいのか」それを問いかけるだけで、私たちのグループの今が見えてくるかもしれない。

次の週末には、写真関係の仕事をしているまた別の知人と、瀬戸内海に浮かぶ現代アートの島、直島へ旅行します。共通の目的と、それぞれの関心を抱いて、さらに脳みそをシャッフルすることになるでしょう。
# by tnexpress | 2012-02-26 02:11 | 道草